電気自動車を購入するにあたって必須なのが、自宅で電気自動車を充電することが出来る充電スタンドの設置です。
電気自動車の充電スタンドの設置費用は2021年現在、約10万円~20万円かかると言われており、個人で利用する場合に限ればそこまで高い金額ではありません。
ただ、SAや商業施設に存在しているような急速充電器の設置の場合、充電スタンドの数によっては大掛かりな工事が必要となり、利用者が満足して利用出来る設備を整えるのに約300万円~1000万円以上もかかると言われています。
こういった事業者や商業施設、宿泊施設や個人(共同住宅所有者)を対象とした充電スタンドに設置に関する費用の軽減を目的とした国の補助金が存在していることをご存知でしょうか?
今回新たに、令和3年度の補正予算において交付が決定した「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」の充電インフラの部分について詳しく紹介していきます。
今回の記事のポイントとして2021年度からの変更点を簡潔にまとめると
- 令和3年度補正予算案(2022年度)の充電インフラ補助金は急速充電スタンドのみという記述がほぼ撤廃
- 入替設置については、既設充電設備を設置してから8年以上から5年以上に緩和
- インターネット上に充電設備の場所や利用可能時間、メンテナンス等による休止状況および空き状況などを記載しなければならない
上記の3点となります。それでは早速それぞれの補助金内容について見ていきましょう。
目次
充電インフラ整備事業費補助金
電気自動車やプラグインハイブリッド車へ電気を供給する充電設備の導入にかかる費用を補助し、充電設備を新品で購入し設置を行う方に対して補助金を交付する事業となっています。
重要なのは、”新品”であること。中古で購入した充電スタンドを設置する場合にはこの補助金を利用することが出来ないので、注意が必要です。
補助金を交付する事業は大きくわけて以下の3種類となります。
・高速道路SA・PA及び道の駅等への充電設備設置事業(経路充電)
・商業施設及び宿泊施設等への充電設備設置事業(目的地充電)
・マンション及び事務所・工場等への充電設備設置事業(基礎充電)
経路充電、目的地充電、基礎充電の中でもそれぞれ細かく規定があり、対象によっては補助金の対象となる経費や補助率が異なります。
経路充電
経路充電は高速道路SA・PA、道の駅、空白地域の場合の3種類があります。
高速道路SA・PA等の基本情報
○補助金の対象経費:充電設備の購入費及び設置工事費
○補助率:充電設備の購入費、設置工事費ともに定額(1/1以内)または1/2以内(急速充電以外)
なんと、高速道路に設置する経路充電の場合は最大で満額まるまる補助金がおりる可能性があります。
2022年度の補正予算案からは補助率に1/2以内という新たな記述がされており、急速充電スタンド以外の購入費の補助金の交付上限は機器費用の1/2以内となっています。
工事費は全て出る可能性もありますが、既設の普通充電設備、コンセント及びコンセントスタンドを撤去し、新たに普通充電設備、コンセント及びコンセントスタンドの設置のみを行う申請の場合、設置工事費の補助率は1/2以内となります。
ただ、特別な仕様に基づく工事であるかそうでないかで補助上限額は異なっており、特別な仕様に基づくというのは充電設備設置場所を管轄する国や地方公共団体が特別に適用を指示する規格および仕様に基づいて工事を行う必要がある場合を指します。
詳しくは以下のURLからご確認ください
また、以下の申請要件を同時に満たしていないとこの補助金を利用することは出来ません。
(1)設置場所が公道に面した入口から誰もが自由に出入りできる場所にあること。
(2)充電設備の利用者を限定せず、他のサービスの利用または物品の購入を条件としないこと。ただし、駐車料金等センターが特に認める料金の徴収は可
(3)センターが求める条件を満たした充電場所を示す案内板を高速道路SA・PA等の入口に設置すること。
(4)充電設備の場所や利用可能時間、メンテナンス等による休止状況および空き状況などを利用者が誰でもインターネット上で確認できること。ただし、インターネット上に掲載予定であることを申告し、実績報告においてインターネット上の掲載先等を報告することで可
(5)充電設備が24時間利用の可否を申告すること。24時間の利用ができない場合は、
利用可能時間とその理由を申告すること
(6)入替設置については、既設充電設備を設置してから5年以上が経過していること
2021年度のものでは、高速道路SA・PAに設置する充電スタンドの補助金の要件として、急速充電スタンドであることが必要最低条件ではありましたが、今回は廃止され交付対象となっている種類のものであればどの充電スタンドでも交付申請が可能となりました。
また、入換設置についてもその条件が緩和され、以前までの8年経過から5年経過へと変更されています。
新規設置の場合は(1)~(5)まで、入換設置に関しては(1)~(6)を全て満たしておく必要があります。
高速道路などで必要とされるのは、基本的には短時間でフル充電が出来る急速充電設備ですが、急速充電スタンドはほとんどのSAには設置が完了しているので、さらに充電スタンド数を増やすために、普通充電スタンドの設置を行う場合でも補助金が出るようにしたのでしょう。
道の駅の場合の基本情報
○補助金の対象経費:充電設備の購入費及び設置工事費
○補助率:充電設備の購入費、設置工事費ともに定額(1/1以内)または1/2以内
こちらも高速道路の場合と同様に最大で掛かる費用の満額の補助金を受け取ることが出来た2021年度から1/2以内という記述が追加されています。
ただ、特別な仕様に基づく工事であるかどうかというところは道の駅の経路充電の場合は関係はありません。申請要件は以下を満たしておく必要があります。
(1)設置する充電設備は、急速充電設備であること。←2022年度は廃止
(2)設置場所が公道に面した入口から誰もが自由に出入りできる場所にあること。
(3)充電設備の利用者を限定せず、他のサービスの利用または物品の購入を条件としないこと。ただし、駐車料金等センターが特に認める料金の徴収は可
(4)充電場所を示す案内板を道の駅の入口に設置すること。
なお、案内板はセンターが求める条件を満たし、車道の上下線から視認できるように
設置すること。
(5)原則、設置する充電設備が24時間利用できること。
(6)国土交通省に道の駅として登録されていること。
(7)新規設置については、充電設備がない場所へ新たに充電設備を設置すること。
(8)充電設備の場所や利用可能時間、メンテナンス等による休止状況および空き状況などを利用者が誰でもインターネット上で確認できること。ただし、インターネット上に掲載予定であることを申告し、実績報告においてインターネット上の掲載先等を報告することで可
(9)入替設置については、既設充電設備を設置してから5年以上が経過しており、かつ一定需要が見込まれる場所に設置すること。
高速道路の場合とほとんど一緒ですが、道の駅の場合は営業時間があるので、営業時間外でも駐車場は24時間開放しておく必要があります。そうでない場合はこの補助金は申請出来ないので注意が必要です。
空白地域の場合の基本情報
○補助金の対象経費:充電設備の購入費及び設置工事費
○補助率:充電設備の購入費、設置工事費ともに定額(1/1以内)または1/2以内
上記のように、経路充電であれば高速道路や道の駅、空白地域(そのどちらにも属さない地域)のどの場合でも補助率は最大で100%となっています。
ただ、空白地域の場合は以下の申請要件は全て満たしておかなければなりません。
(1))設置する充電設備は、急速充電設備であること。ただし、普通充電設備、充電用コンセント及び充電用コンセントスタンドを急速充電設備と併設する場合は、この限りではない。
(2)設置場所が公道に面した入口から誰もが自由に出入りできる場所にあること。
(3)充電設備の利用者を限定せず、他のサービスの利用または物品の購入を条件としないこと。ただし、駐車料金等センターが特に認める料金の徴収は可
(4)充電場所を示す案内板を施設の入口に設置すること。
(5)原則、設置する充電設備が24時間利用できること。(地方公共団体の庁舎等は含まない。)
(6)充電設備の場所や利用可能時間、メンテナンス等による休止状況および空き状況などを利用者が誰でもインターネット上で確認できること。ただし、インターネット上に掲載予定であることを申告し、実績報告においてインターネット上の掲載先等を報告することで可
(7)空白地域における電欠防止の観点から特に重要な場所であり、原則、設置予定場所より公道上道のり15km以内に急速の公共用充電設備が設置されていないこと。(なお、
高速道路SA・PA等に設置されている充電設備は含まない。)
(8)入替設置にあっては、既設の公共用急速充電設備が設置してから5年以上経過しており、それが撤去されれば(7)と同様の状況となること。また新規に設置する充電設備と入れ替えに当該既設充電設備を撤去する予定であること
空白地域に設置する際のみ、2022年度も引き続き急速充電スタンドである必要が出てきますが、空白地域は充電スタンドが15km以内に設置されていないことが申請条件に含まれているため、いわば近くに充電インフラが整っていないということに繋がるので、補助金交付で設置する場合は急速充電スタンドの設置を促したいという国の思惑があるのでしょう。
それを除けば、経路充電で補助金を受け取って設備を整える場合は、急速充電スタンドである必要がなくなりました。2021年度までは道の駅や空白地域などで急速充電設備ではなく、普通充電設備を置く場合はこの補助金は利用することが出来ませんでしたが、2022年からは大きく条件が緩和されたので、補助金の申請がしやすくなりました。
目的地充電
目的地充電は経路充電のように設置する場所によって細かい規定はありません。商業施設及び宿泊施設等の1種類です。
商業施設及び宿泊施設等の基本情報
○補助金の対象経費:充電設備の購入費及び設置工事費
○補助率
充電設備の購入費:1/2以内
設置工事費:定額(1/1以内)または1/2以内
2021年度では工事費は最大で満額出ていましたが、2022年度からは工事費すら半分の金額しか出ない可能性があるということになります。
ただ、2022年度の補正予算案では、普通充電スタンドやコンセントの設置のみにしか対応していなかった要件に、急速充電スタンドが適用されたので、その申請条件の幅は広がったことになります。
申請要件は以下となります。
(1)設置する充電設備は、原則、普通充電設備であること。←2022年は廃止
(2)設置場所が公道に面した入口から誰もが自由に出入りできる場所にあること。
(3)充電設備の利用者を限定せず、他のサービスの利用または物品の購入を条件としない
こと。ただし、駐車料金等センターが特に認める料金の徴収は可。
(4)充電場所を示す案内板を商業施設および宿泊施設等の入口に設置すること。
なお、案内板はセンターが求める条件を満たし、車道の上下線から視認できるように
設置すること。
(5)充電設備の場所や利用可能時間、メンテナンス等による休止状況および空き状況などを利用者が誰でもインターネット上で確認できること。ただし、インターネット上に掲載予定であることを申告し、実績報告においてインターネット上の掲載先等を報告することで可
(6)充電設備が24時間利用の可否を申告すること。24時間の利用ができない場合は、利用可能時間とその理由を申告すること。
(7)入替設置については、既設充電設備を設置してから5年以上が経過していること。
やはり2022年度の補助金交付要件として大きな変更点は、補助対象となっているすべての充電設備が選択可能となったことでしょう。
基礎充電
基礎充電はマンション等に設置する場合と事務所・工場等へ設置する場合の2種類があります。
基礎充電に関しては、2021年度の補助金内容を比較しても、その情報に大きな変更点はありません。
マンション等の基本情報
○補助金の対象経費:充電設備の購入費及び設置工事費
○補助率
充電設備の購入費:1/2以内
設置工事費:定額(1/1以内)または1/2以内
この場合のマンションは共同住宅や長屋のことを広く指しており、分譲であるか賃貸であるかは問題ではありません。
こちらも目的地充電と同様に充電設備の購入費に関しては最大で半分の金額までしか補助金は受け取ることが出来ません。
また、以下の全ての申請要件を満たしておく必要があります。
【分譲・賃貸共通】
(1)充電設備の受電元は、マンション等の共用部の配電盤、分電盤等であること。
(2)充電設備の利用者は当該マンション等の居住者または駐車場の契約者であること。
ただし、充電設備の所有者が許可をした場合は、当該マンション等の居住者または駐車場の契約者以外の利用も可。
(3)入替設置については、既設充電設備を設置してから5年以上が経過していること。【分譲の場合】
(4)新築のマンション等で申請者が販売事業者の場合は、竣工後に充電設備等の所有者
を建設会社等から管理組合へ変更する前に、財産処分の手続きが必要となるため、センターへ報告し指示を受けること。なお、重要事項説明会等において当該充電設備の管理義務等について変更先に説明すること。
(5)分譲済の場合は、公募兼交付申請時に「住民総会」で充電設備の設置が決議されて
いる、または理事会での合意がされていること。
【賃貸の場合】
(6)賃貸マンション等の所有者が、自らの駐車場に設置することを目的としている申請
ではないこと。
誰もが利用出来る充電スタンドの設置を目的とした補助金のため、マンションの所有者のみしか利用できない充電スタンドにする場合はこの補助金の許可はおりません。
また、新たに入替設置については、既設充電設備を設置してから5年以上が経過していることが追記されています。
事務所・工場等の基本情報
○補助金の対象経費:充電設備の購入費及び設置工事費
○補助率
充電設備の購入費:1/2以内
設置工事費:定額(1/1以内)または1/2以内
2021年度は電気自動車の保有台数によって購入費の補助金額に差があり、10台未満の場合は最大で半額までの補助率ですが、10台以上保有している場合は2/3以内となり、受け取れる金額が増えていましたが、2022年度は廃止されています。
また、以下の申請要件を全て満たして置く必要があります。
(1)充電設備の利用は、申請者が所有する社有車・従業員の通勤車であること。
ただし、充電設備の所有者が許可をした場合は、来客車の利用も可。
(2)社有車駐車場、従業員駐車場と敷地内の区画を明確に分けていること。
(3)社有車用で申請する場合は、社有車駐車場へ設置すること。
(4)従業員用で申請する場合は、従業員駐車場へ設置すること。
(5)電気自動車等を今後購入する台数と時期を申告すること。購入する電気自動車等は新車(リース含む。)のみ対象とします。
なお、交付申請前に契約および購入されたものは購入予定に含みません。
(6)事務所・工場等が自宅を兼ねている場合で、駐車場が自宅兼事務所等に付随していないこと。
事業所や工場などに設置する場合の利用者は基本的にその社員の通勤車や社有車に限られています。上述している他の充電設備の場合は利用者を限定せず、だれでも利用出来るものとしての意味合いが強かったのに対し、こちらは狭く限定的です。
ただし、充電スタンドが急速充電であるか普通充電であるかの指定はありません。
補助金の交付上限額について
ここまで、大きくわけて3つの補助金事業の申請内容や要件について詳しく紹介してきましたが、各々で異なる補助金上限額が決められています。
以下は2口設置までに関するものとなっています。
【急速充電設備】
定格出力が10キロワット以上50キロワット未満の急速充電設備
- 高速道路SA・PA及び道の駅等への充電設備設置事業 120万円
- 商業施設及び宿泊施設等への充電設備設置事業並びにマンション、月極駐車場及び事務所・工場等への充電設備設置事業 60万円
定格出力が50キロワット以上の急速充電設備
- 高速道路SA・PA及び道の駅等への充電設備設置事業 500万円
- 商業施設及び宿泊施設等への充電設備設置事業並びにマンション、月極駐車場及び事務所・工場等への充電設備設置事業 250万円
定格出力50キロワット以上の蓄電池付急速充電設備
- 高速道路SA・PA及び道の駅等への充電設備設置事業 600万円
- 商業施設及び宿泊施設等への充電設備設置事業並びにマンション、月極駐車場及び事務所・工場等への充電設備設置事業 300万円
【普通充電設備】
定格出力が6キロワット未満の普通充電設備 25万円
定格出力が6キロワット以上10キロワット未満の普通充電設備 35万円
【充電用コンセント】
一律 7万円
【充電用コンセントスタンド】
一律 11万円
充電インフラ整備事業の受付開始日および受付締切日
令和4年4月14日(木) ~ 令和4年9月30日(金)
※予算の上限は記載されていませんが、早いもの勝ちとなっているので早急な申請をオススメ致します。
まとめ
この充電インフラ整備事業費補助金は、充電設備の普及を早急にすすめることで個人が電気自動車を購入する機会を増やすことを目的としているため、補助率のパーセンテージは非常に高く設定されており、2022年度からはさらにその対象が広がりをみせ、充電インフラの整備はさらに爆発的に増加していくことでしょう。
残念ながら2022年度も引き続き各家庭に設置する充電スタンドに関しては利用することが出来ない補助金ではありますが、この補助金を利用して公共の施設などの充電スタンドが一般的となれば、次は電気自動車の購入を直接的に促すような個人に対する補助金制度が立ち上がる可能性は十分高いと言えます。
普及率の低い電気自動車ですが、2030年代半ばまでに100%の保有率を目指すという政府の施策が発表された以上、いずれは必ず充電スタンドを設置することになるでしょう。充電スタンドの設置を考えている企業は、ほぼ100%の補助率を考えると天井が見えている今この時期にほぼ手出しなしで設置するのが得策と言えます。