電気自動車の年間走行距離はどのようなプロセスで減っていくのか?予防策は?

電気自動車の年間走行距離はどのようなプロセスで減っていくのか?予防策は?

世界各国で販売されているすべての電気自動車は、避けては通れないバッテリーの劣化に対して様々な対応策をとっていますが、劣化を遅らせることは出来ても、劣化をさせないということは出来ません。

チャスタでも紹介しましたが、電気自動車の所有コストはガソリン車に比べて大幅に低いことは証明されてはいるものの、どのバッテリーでも充電と放電を繰り返すたびに劣化していきます。使い方によってはバッテリーの劣化が早まり、バッテリーの交換を繰り返すようなことになれば、決してガソリン車よりもメンテナンス・ランニングコストが安いとは言えなくなるでしょう。

電気自動車用のバッテリーの蓄電容量は充電の仕方はもちろんのこと、乗り方や管理方法、電池の化学的性質などで、その失い方に様々な要因があります。

今回の記事では、一般的にバッテリーの劣化が早まるとされる要因について、またその予防策としてどういう対処を取ればいいのかを紹介して行きます。

目次

バッテリーを劣化させる要因

バッテリーを劣化させる要因

一概にこれが原因であると断定出来るというよりも、非常に細かい様々な要因があるとされていますが、大きく分けて4つあるとされています。

急速充電

急速充電自体が、必ずしもバッテリーの劣化を早めるものではありませんが、急速充電を繰り返すと、出力が大きいことによる熱負荷の増加で、バッテリーセルの内部部品が損傷してしまうことが判明しています。この損傷が原因となって、リチウムイオンの流れが悪くなってしまうので、実際に使える容量が減ってしまうのです。

アメリカのアイダホ国立研究所において、2012年式の日産リーフ4台を用いて行われた実証実験の例によれば、2台は3.3kWの家庭用充電器で充電し、残りの2台は50kWの急速充電器のみで充電するというテストを行いました。その結果、4万マイル(65,000km)走行した後、急速充電器で充電した方が3%だけ劣化していることがわかりました。3%でも航続距離は短くなりますが、電池の劣化の度合いはそれほど高くありません。

気温の変化

気温が低いと、電気自動車の充電速度が遅くなり、全体の航続距離が一時的に制限されます。こうなるとバッテリーの性能が低下してフルに性能を発揮できないことに加えて、電力消費量も早くなり、エアコンをつけっぱなしで走行することにでもなれば、電欠になる機会がかなり増えてしまいます。

また、寒冷地だけではなく、比較的高温になりやすい地域においても、そういった環境の長時間さらされることで、電池にダメージを与え、これまたベストな条件で利用した場合と比べて使える容量というのは減ってしまいます。

電気自動車のバッテリーは気温の変化に弱いので、周りの環境に合わせて、その都度管理方法を考える必要があるのです。

走行距離

携帯電話のバッテリーのような他のリチウムイオン電池と同様に、充電サイクルが多いほどバッテリーセルの消耗が激しくなります。テスラのモデル3においては、モデルSが25,000マイル(40,000km)を越えた辺りから5%程度の劣化が見られると発表しています。

ただ、その後にさらに5%の電池劣化をしてしまう走行距離に関しては、10万km以上走った場合と報告しているので、走行距離が増えれば増えるほど極端に劣化が早くなるというわけではありません。ただ、これはあくまで新品の電気自動車をそのまま利用し続けた場合に限ります。

バッテリーを使った年月

上述したすべての要因とは比べ物にならないほどバッテリーの劣化の主たる原因は、時間となります。初期の日産のリーフとはなってしまいますが、たったの6年で35%のバッテリー容量を失ってしまったとの報告も上がるほど、利用した年月というのは大きな影響を与えます。

水冷式のバッテリーを搭載したモデルであれば、劣化の割合はもっと低くなりますが、新品の電気自動車を続けて利用して10万km走った際のバッテリーの最大容量の減り方と、5年をかけて10万kmを走った際のバッテリーの容量の減り方は天と地ほどの差があります。

バッテリーの劣化は大きな要因ひとつが作用しているわけではなく、上述したすべての要因が複雑に組み合わさって、発生しているのです。

バッテリーの容量低下を避ける予防策について

バッテリーの容量低下を避ける予防策について

夏場にEVを長時間放置する場合は、可能な限りプラグを差し込んだままにしておくことが望ましいです。水冷式バッテリーを搭載していない電気自動車の場合は、暑い日には日陰においておくことを推奨します。

逆に水冷式のバッテリーを搭載しているEVの場合、いきなり長時間の運転を開始するのではなく、10分程度の運転やアイドリングなどのプリコンディショニングを行ってから走行すると、バッテリーのオーバーヒートを暑い日でも避けることが出来ます。

バッテリーの容量に関しては、常に20%以上を保つようにします。また、常に満充電をするのではなく、およそ80%程度の充電容量を意識しましょう。20%~80%程度の充電容量で利用するようにすれば、バッテリーの劣化を遅くすることが出来ます。

基本的にはこれらの対策を徹底すれば、メーカーが推奨する利用期間やバッテリーの交換期間を大きく越えて、快適に電気自動車を利用出来るはずです。使い方や管理方法を徹底すれば、一度もバッテリーを交換することのないまま10年以上使い続けることも不可能ではありません。

電気自動車を所有している方、今後所有を考えている方のどちらも覚えておいて損はないのではないでしょうか?

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