フォルクスワーゲンの新型EV【ID.3】が欧州で大人気な理由とは?
2020年の7月から欧州にて販売開始されているフォルクスワーゲンのEVモデル、IDシリーズの【ID.3】が約1年強の期間で受注が14万件を超えたと発表しました。
この内の約半分の顧客が、フォルクスワーゲンを初めて購入するユーザーであり、決してブランド名だけで売れたものではないということは想像に難くないでしょう。
IDシリーズの中でも欧州で最初に発売されたのがフルコネクテッド機能を備えたコンパクトEVのID.3であり、SUVタイプのID.4や高性能モデルでスポーツEVであるID.4GTXなど3種類の中でも突出した販売台数を誇ります。
フォルクスワーゲンは輸入車として日本でも人気の高いメーカーです。今回の記事では欧州で大人気となっている【ID.3】の性能面について、また今後日本でも販売されるかどうかというところにも着目してお伝えしていきます。
目次
ID.3は3種類のモデルがある
ロングホイールベースと短いオーバーハングが特徴のこのモデルは、電気自動車用に新開発されたMEB(モジュラーエレクトリックドライブマトリックス)車体を使用しています。フラットなバッテリーをフロア下に設置しているので、ガソリン車以上の広い室内を実現させています。
このID.3にはバッテリーの容量によって3種類のモデルが用意されています。それぞれの性能を見ていきましょう。
45kWhの”ピュア”モデル
ID.3のエントリーモデルとなっているのが、バッテリー容量45kWhを搭載した”ピュア”です。フル充電からの最大航続可能距離はおよそ330kmとなっており、最大出力は126psか150psかの2種類のレベルから選択出来ます。
気になる値段は約490万円とコンパクトカーの部類にしては非常に高額です。さらに、これはあくまでベーシックモデルの値段であり、オプションをつけるプラスモデルやトップモデルに変更すると、値段は跳ね上がります。
58kWhの”プロ”モデル
バッテリー容量58kWhを搭載したミドルクラスのモデルです。フル充電での航続可能距離はおよそ420kmで、最大出力は146psと204ps(パフォーマンス)を選択することが出来ます。
パフォーマンスを選択した場合、停止状態から60kmまで加速するのに掛かる時間はわずか3.4秒と非常に短い時間となっていますが、電気自動車全体で見ると、そこまで速いものではありません。
値段に関しては500万ちょっとします。ピュアモデル同様にベーシックモデルの金額であり、オプションによっては600万円を楽に超えてきます。
最近追加された77kWhの”プロS”モデル
バッテリー容量が77kWhというかなりの大きさを誇るこのモデルは、最大航続可能距離540kmを実現させています。最大出力に関しては、ピュアモデルとプロモデルが選択出来ることに対して、プロSでは204psで固定されています。
これら3種類のモデルはすべて、AC(交流)、三相交流、DC(直流)で充電できます。出力100kWまたは125kWの急速充電に対応しているのも魅力のひとつで、30分の充電で290km走行出来ることも証明されています。
高額なのに人気が高い理由
フォルクスワーゲンの電気自動車は、現在は生産が終了している過去モデルのeゴルフを含めて、EVと見た目でわかるような特徴的な部分がほとんどありません。今回人気を博しているID.3も、非常にスタイリッシュな外観をしています。
また、欧州では特に電気自動車の需要が高まっていながらも、そのほとんどが輸入車に頼っている状況であったため、ネームバリューもあるフォルクスワーゲンが十分な航続可能距離と性能を両立させた新型のEVを出したことで、購入に拍車をかけることとなりました。
その証拠に、ID.3をファーストカーにしている家庭が購入者の8割程度にものぼっており、ガソリン車撤廃に向けての施策が毎日ように取り沙汰されている欧州だからこそ、ガソリン車を手放して電気自動車にシフトチェンジすることは当然なのです。
フォルクスワーゲンであるから、航続可能距離が長いからなどといった理由で人気を集めているというよりも、新型EVでファーストカーにするための性能を十分に備えているからこそ売れていると言えます。
日本には2022年に上陸予定
日本への導入も検討されており、フォルクスワーゲングループジャパンによれば、「日本へのID.ファミリーの導入は、マーケット状況を含めて検討しており、2022年以降を予定しています」とのこと。
日本の市場であれば、とにかく価格の安さや航続可能距離の長さが評価の対象となってしまうため、欧州のように大成功を収める可能性は低いと言えます。
ガソリン車を手放して電気自動車をファーストカーにする時代がくるまでは、厳しい販売台数となりそうですが、その性能や航続可能距離は現在日本でも購入可能なテスラと比較しても、全く見劣りしないものです。フォルクスワーゲンのEVが日本に導入される2022年が楽しみですね。