【最新版】充電スタンドが無くなるかも?バッテリー交換という新たな戦略が登場!
電気自動車の給電方法としては、発売当初から充電スタンドにてバッテリーを充電するという方法が一般的であり、一般向けに電気自動車が販売されて以降のここ10年間でも、まったく変わることがない根幹たる部分です。
ところが、ガソリンスタンドで給油をする場合と比較すると、満充電にかかる時間の長さが非常にネックであり、バッテリー自体の容量が大幅に増えてきたこともあって、電気自動車を所有する選択肢をとる場合においては、大きな懸念材料となってしまっています。
ここ10年間で充電スタンドの数も増え、ガソリンスタンドの数と遜色がないところまで来ていますが、電気自動車を今以上に普及させるためには充電スタンドの数ではなく、性能面を強化する必要があるのは周知の事実です。
そんな中、10分で満充電出来るEVバッテリー交換のAmpleがENEOSと日本国内での交換インフラ事業を展開することで合意したとのニュースが飛び込んできました。
目次
バッテリーを充電ではなく交換することに着目
バッテリーの充電時間がネックであるならば、バッテリーを満充電のものと交換するような給電方法に注目が行くのは当然です。実際に14年ほど前に消耗したバッテリーを充電されたばかりのものに交換し、自動化された電池交換ステーションのネットワークを作るという謳い文句で1,000億円を調達した会社が話題となりました。
結論から言えばこれは結局実現しなかったのです。当時の電気自動車の数が少なく、バッテリーの交換をする施設を立ち上げたとしても、費用対効果が十分ではないことが主な要因で、わずか6年ほどで会社が精算されてしまうという事態を招いたのです。
ところが、ここ数年の電気自動車の世界情勢の変化により、このバッテリー交換のシステムを復活させることを発表した会社が出てきたのです。それが今回ENEOSと提携を発表したAmpleというわけです。
充電スタンドやバッテリー容量は頭打ち感がある
2021年6月現在の電気自動車や充電スタンドの日本の情勢はどのようなものかをまずは知っておく必要があります。
日産が6月当初に予約を販売開始した新型電気自動車のアリアの性能を見てみると、別途記事でも紹介しますが、バッテリーの容量は91kWhのものを搭載しているロングドライブモデルも発表されています。航続可能距離は610km以上と、リーフの最高モデルと比較してもおよそ1.3倍の向上を果たしました。
ところが、バッテリーの性能面が単純に増えたというわけではなく、実際は若干中身が異なっているのです。
実は、容量を増やした分を航続可能距離に全てを振り切るというわけではなく、車の出力の方を上げたことで、そこまで航続可能距離は伸びていません。にも関わらず、現在の充電スタンドは性能面が昔と変わっていないので、要は単純に充電にかかる時間が伸びてしまったのです。
これは非常に由々しき事態であり、2022年以降の電気自動車の販売も超小型モビリティばかりのラインナップ。2030年までに充電スタンドの数を15万基に増設するという政策を政府は発表しましたが、急速充電器の最高規格が50kWhと制限されている今ではまったく意味をなさないものなのではないでしょうか?
2030年代半ばまでに電気自動車の所有率を100%にするという目標を達成するためには、電気自動車がファーストカーに選ばれる必要があります。超小型モビリティの販売にシフトしつつある今のこの傾向では、到底無理な話です。超小型モビリティをファーストカーの選択肢として考える方はほぼいないでしょう。
充電スタンドの性能を考えれば、日産が発表したアリアの性能が現行のギリギリのラインだと言えます。今のままではこれ以上の進化は見込めないでしょう。いわゆる頭打ちというわけです。
Ampleのバッテリー交換システムは現状を打破する画期的なもの
一般的な電気自動車ではバッテリーパックを車から取り外すことは想定されていません。ところがAmpleのシステムを用いれば、純正のものとまったく同じ寸法のアダプタープレートを備えたバッテリーパックと交換することが出来ます。
どんな電気自動車にも対応可能かつ車自体の特殊な改造もまったく必要としないので、このシステムを導入する際にかかる費用や時間も大幅に削減可能となっています。
気になるのはバッテリー交換にかかる時間でしょう。ちなみに現行の急速充電器を利用して、日産のアリアを充電する場合、満充電までは2時間もかかってしまいます。
2021年現在で、バッテリー交換にかかる時間はわずか10分です。たったの10分で満充電されたバッテリーを利用することが出来るのです。さらに言うと、年内には5分に短縮することを目標に掲げているとのこと。今までネックであった充電時間を大幅に短くするためには、充電するのではなく、交換することが主流になる日は近いかもしれません。
現在では、このAmpleが提供しているバッテリープレートを標準搭載している車両はありませんが、日産とは間接的に繋がりを持っています。今後はバッテリープレート自体を新車を製造する際にAmpleのものを取り付けるかどうかを消費者が選択できる時代が来るのではないでしょうか?
【追記】Ampleが追加で176億円を調達!いよいよ本格始動!
これまでの資金調達額は、バッテリー交換事業を開始して8年間で約80億円でしたが、今年の力の入れようは一味もふた味も違い、なんとその倍の金額である176億円を一気に確保してきたのです。
日本で提携しているENEOSはもちろんのこと、世界各国の投資家達がバッテリー交換事業に着目し、今後販売される電気自動車への搭載が確実なものになるとの見通しを示したAmpleを支持する意見が大多数を占めたのです。
自動車メーカーのほとんどが、バッテリーとEVを切り離すことは出来ないという考えを明確に示していますが、実際のところは完全に別個に作られているので、電気自動車が市場に出回り始めたことで、当初の最大効率だった”充電”という観点から完全に脱却されると、今までの製作技術や充電することを前提として作られたシステムを一からやり直す必要が出てくるため、なかなかバッテリー交換を認めることはありません。
ですが、中国の自動車メーカーであるNioはこの交換システムを市場にすでに導入済みで、すでに240万台以上のバッテリーを交換したことを発表しています。
現在Ampleのこのバッテリー交換技術に興味を示しているのは、充電インフラが整っていない中でもEV移行に積極的な意見を持っている国に限られているようですが、上述した中国のようにバッテリー交換をオプション制にすることで大成功を収めている事実もあるので、今後の日本のメーカーが一体どのような方針を示すか注目したいところですね。